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ミュージカル「フットルース」 東京芸術劇場

 84年公開の映画「フットルース」のミュージカル。 80年「フェーム」、83年「ステインアライブ」、83年「フラッシュダンス」など、ロックとダンスをモチーフとした映画が続々と登場した時代。こうタイトルを並べてみただけでも、80's感が漂っていますネ。

 ミュージカルというと、一見、難しく感じてしまって二の足を踏んでしまう方も多いかもしれませんが、歌、ダンス、演技を駆使したドラマ表現は、結構、理屈抜きで楽しめます。特にフットルースの様な作品は、ストーリーがわかりやすいし、演じられる曲目も良く知られたヒットソングばかり。音楽もフルバンドの生演奏で、舞台手前のお堀の中に楽団が入っていたりする訳で、ある意味、とても贅沢なステージですネ。

 ディスコピープルには曲から話に入った方が良いかナという所で、とりあえず、使われている原曲でわかりやすいところをピックアップしてみると、フットルース / ケニー・ロギンス、危険なガール / サミー・ヘイガー、誰かの愛が... / カーラ・ボノフ、ヒーロー / ボニー・タイラー、アイム・フリー / ケニー・ロギンス、レッツ・ヒア・イット・フォー・ザ・ボーイ / デニース・ウィリアムス、パラダイス〜愛のテーマ / マイク・レノ(ラバーボーイ)&アン・ウィルソン(ハート)・・・ケニー・ロギンス、映画のサントラが出た時は、ロギンス&メッシーナの頃と比べると、この路線がなかなか結びつかなかったものでした。

 ところで、主人公のレンは大都会シカゴから田舎町のボーモントの高校に転校してきた訳ですが、この辺のナンバーだと、80年代、渋谷の高校から転校してきましたっぽい感じかも。ちなみに、映画でおなじみの曲に加えて新たにミュージカル向けの楽曲が随所に追加されています。

 「ダンスもロックも禁止」の田舎町に転校してきた主人公レンであります。例によって、やり場のないエネルギーが青春の葛藤を呼ぶ訳ですが、彼は、町の指導者であるムーア牧師にアリエルや仲間たちと共に議会制民主主義を通じて挑みます。この辺の描き方は、植木豪さん演じるレンのピュアな姿勢が舞台からストレートに伝わってきました。一方、ムーア牧師をとりまく妻のヴァイ、娘のアリエルですが、小さな田舎町の権力者となってしまった彼の過程と家庭、このあたりはシーンの展開と共にテンポ良く織り込まれて描かれていました。そして、川崎麻世さんが演ずる自らのあるべき姿に苦悩するムーア牧師には、青春っぽさが残っていました。神父の妻であるヴァイ役の川島なお美さんは上品な役どころで舞台栄えしていたのはスゴイと思いましたが、想像以上に歌が上手い。そして、やっぱり青春っぽいんですね。

 印象に残ったシーンは、やはり、レンとアリエルの「パラダイス〜愛のテーマAlmost Paradise」、そして、アリエル、ラスティ、アーリーン、ウェンディ ジョーを中心としたフォーメーション、キャストの一大スペクタクルって感じの歌とダンスシーンは青春の群像っていう所かナ。「僕は踊れないんだ!」とか言っていたのに、次の展開ではめっちゃ踊りが上手くなっていたウィラード、このスピード感はグッと来ました。あと、随所で使われていた「誰かの愛が...Somebody's Eyes」の曲の使い方は、ユニークで面白かったです。麻倉未稀さんはレンの母親であるエセル役でしたが、フィナーレの「ヒーロー Holding out for a Hero」は圧巻でした。ロック・ミュージカルですが、全編日本語版。ロックンロールの持つ歯切れのよさ、ダンスが打ち出す感情表現・・・青春ものって、やっぱりイイですね。